優しく、風のように寄り添ってくれる乳がんヨガ

医療法人社団 mammaria tsukiji 杉山 迪子 医師


 私は乳腺専門クリニックで日々多くの乳がん患者さまの診療を行っています。

来院される患者さまはこれから乳がんの治療を開始される方、手術を終えられたばかりの方、乳がんに罹患されて数年たっている方などさまざまです。

そのなかには「乳がんのことを考えると不安になってしまう、眠れないことがある」といったお悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。罹患から数年たっていて身体的には落ち着かれているように見える方でも「手術や抗がん剤治療中はとにかく必死であまり考えなかったけれど、時間が経ってからのほうがいろいろなことを考えて不安な気持ちを抱えたり眠れなくなることが増えた」とおっしゃる患者さまもいらっしゃいます。

 

 乳がんに罹患する40-60代の方は働き盛り、子育て中、介護中の方も多いので、乳がんだけではない多くのことに向き合っている患者さまも多く、メンタルケアの必要性をいつも感じています。

メンタルケアに対して私が医師としてサポートできることももちろんありますが、それだけではなくて患者さまそれぞれに“セルフケア”の手段を持って頂きたいというのが私の願いです。

“セルフケア”は日常のなかで不安を抱えたときに大きな心の支え、助けになってくれるからです。その“セルフケア”の方法のひとつとして私は乳がんヨガに期待を寄せています。

 

 乳がんヨガの素晴らしいところは、日常に取り入れやすくてすぐに実践できるところ、運動やリハビリテーションなど乳がん術後の機能的な役割を担うことができるところ、そして不安や不眠などのメンタルにもアプローチする力を持つところだと思います。乳がんヨガはありのままの自分を認め、優しく寄り添ってくれる風のような存在だと思います。 

 

 ヨガと乳がんに関する研究も数多く報告されており、ヨガは乳がん治療後のストレスをやわらげQOLに影響を与えるという報告1) やヨガが乳がん患者さまの睡眠の質の改善に良い影響を与えるいう報告2) もあり、今後の報告も期待されています。

 

 BCY Institute Japanは運営メンバーやインストラクターの皆さまが、常に真摯な姿勢で乳がんの知識を学び、乳がんヨガを誠実に伝え続けています。

乳がん患者さまが乳がんヨガに出会い、ご自身の経験された想いを昇華させて輝く姿を私もたくさん見てきました。まずは乳がんヨガをご体験頂き、その後は学びを深めBCY Institute Japanのインストラクターとして今度は誰かの風になって頂けることを願っています。

 

1)Hsueh EJ, Loh EW, Lin JJ, Tam KW: Effects of yoga on improving quality of life in patients with breast cancer: a meta-analysis of randomized controlled trials. Breast Cancer 2021, 28(2):264-276.

2)Zhu J, Chen X, Zhen X, Zheng H, Chen H, Chen H, Liao H, Zhu J, Wang C, Zheng Z, Chen R, Wang Y: Meta-analysis of effects of yoga exercise intervention on sleep quality in breast cancer patients. Front. Oncol. 2023, 13:1146433.